※アドラー心理学の概略が理解できます。
① アドラー心理学の目標
アドラー心理学が目ざすのは、
「共同体感覚 social interest」を育てることです。
共同体感覚というのは、自分には「生きる」意味がある(存在感)、他者に貢献できる(貢献感)、他者に安心感を持ち信頼できる(信頼感)、そこに居られる(所属感)という感覚(を持った状態にあること)と考えています(1)。
私たち一人ひとりが感じる最も重い(心の)苦痛は何でしょうか。恐らく、自分の「居場所がない」「存在を無視される」「独りぼっち」「生きていても意味がない」ということではないかと思います。
世の中には「誰にも迷惑をかけず、経済的にも自立して一人でシッカリ生きているから誰の世話にもなっていない」と言っている人は大勢います。
ところが、よく考えてみると人間社会(共同体)で生きている以上、気づかないところで実に多くの人たちのお世話になっているのです。
例えば、あなたが住んでいる家、誰が建てましたか。今、食べているそのご飯(お米ほか)、あなたが栽培したものですか・・・など。当たり前、と思っているとそれに気づかないのです。
これは現在の日本が平和で、経済力・科学技術力があり、社会の組織がシッカリしていて、個人の権利が守られている法治国家だからかもしれません。どうしても自分(中心)に意識がいきやすく、他者への意識・関心が疎かになりがちです。そんな社会の状況が、相手を尊重する(相手の目で見、相手の耳で聴き、相手の心で感じる=共感する)ことを後回しにしているように思います。
社会には、自分とは意見も何もかも違う人、嫌いな人、どうでもいい人の方が圧倒的に多いものです。そんな人たちと付き合っていかなくてはならない状況では、他者からのダメ出しや威圧、自分の意見が理解されない、思い通りにならないなどホトホト疲れます。そしていつの間にか、勇気がくじかれてしまいます。
家族といえども、何でも理解してもらえているとは限りません。時には居づらくなることもあります。そんなことが繰り返されているうち、他者との関わりを避けてしまう人が増えるのです。家族にでさえも勇気がくじかれて独りぼっちになったら、生きるのが嫌になってしまいます。
勇気をくじかれた人は、自殺したリ、破壊的な行動や人生の無益な側面で行動をするようになる、とアドラー心理学では考えます。
(1)岩井俊憲監修、梶野真著「アドラー心理学を深く知る29のキーワード」祥伝社新書(2015)、第1編
(2.共同体感覚)
② 勇気づけによる他者との関わり
共同体感覚を育てる方法として、アドラー心理学では・・・
「勇気づけencouragement(困難を克服する活力を与えること)」を行います。
勇気づけは、特別なことではありません。
ある心理カウンセラー(カ)と母親とのこんな会話がありました。
母「いつも怒ってばかりで・・・。もっと娘をホメたほうがいいのでしょうか」
カ「もちろんです。でもただホメるだけでは不十分です。勇気づけが必要です」
カ「まず、そのお子さんの存在そのものを認めることが大切です。それからお子さんの強みや
長所に注目して、「ありがとう」「うれしい」と心からいえる点を探し、その感謝や喜び
の気持ちをお子さんに伝えてください。これが勇気づけです」(2)
相手から「ありがとう」「ホンと嬉しいです」と言われたら、どんな気持ちになりますか。感謝されたくてしたことではなくても、言われた自分も嬉しくなったり、「自分も(周りの人たちに)まだ色々できそうだ」とやる気が湧いてきませんか?
「ありがとう」という感謝の言葉は、誰でも、いつでも、直ぐにできる勇気づけなのです。
まとめると、次のようになるでしょう(2)。
相手の・・・・・・
◎価値を認めて伝える
◎長所や小さな成功、強みに注目する
◎価値と行動を分けてとらえる(あなたを好きだけど、その行動は嫌だ)
◎信頼する(無条件で信じる)
◎失敗を受け入れる(チャレンジの証、学習の機会)
◎努力、過程(方法)を認める
◎再チャレンジの機会を与える
それと、他者と比較することはその人を丸ごと受け入れ、認めることが難しくなります。あくまでも相手の「あなた」として、他と比較せずその人そのもの(個性)をみて欲しいのです。
(2)梶野真 「アドラー心理学を深く知る29のキーワード」 第1編(12.勇気づけ)
*アドラー心理学の関連書籍のほか、こちらをご参照ください。